一般の人であれば、あまり聞き慣れないコンクリートのかぶり厚測定という言葉ですが、コンクリートのかぶり厚さは、建物の寿命に大きな影響を与える重要なポイントです。本記事では、コンクリートのかぶり厚測定について、詳しく解説していきます。基準や測定方法も解説していくので、興味のある人は最後まで目を通してみてください。
かぶり厚さとは
かぶり厚さとは、コンクリートの表面から鉄筋の外側までの最短距離のことをいいます。かぶり厚さは、建築基準法施行令や鉄筋コンクリート構造設計規準など、各種規格によって定められているため、必ず測定を行う必要があります。その測定が、「かぶり厚測定」とよばれるものです。
かぶり厚さの重要性
建築基準法施行令によって定められているかぶり厚ですが、基準通りの厚さで施行しなければならない理由は、主に鉄筋を腐食から守る役割をしているからです。
コンクリートの内部は強いアルカリ性の性質を持ちます。そのため、鉄筋は酸性になりにくくサビから守られるのです。しかし、コンクリート内部のアルカリ性は、空気中の炭酸ガスと反応するとアルカリ性を失ってしまいます(以下、中性化)。コンクリートのひび割れも、水分や炭酸ガスが発生してしまうため、中性化しやすくなってしまう原因です。
鉄筋はサビてしまうと、体積が増えるため、内部からコンクリートを破壊する爆発現象が起こります。一度爆発が起こると、中性化のスピードが加速し、鉄筋だけでなくコンクリートの寿命も縮めてしまうことに。
他にも、火災時に鉄筋が高熱にさらされるのを防ぎ、構造物の寿命を守る耐火性という役割も持ちます。それらのことから、コンクリートのかぶり厚は、鉄筋の適切な寿命を守る重要な役割をしているのです。
かぶり厚さの基準
コンクリートのかぶり厚は、建築基準法や各種規格などによって、定められています。ただし、構造物や住んでいる地域や使用環境などによっては、調整が必要です。一般的な基準は、以下になります。
- 通常の環境(耐力壁以外の壁・床):20mm以上
- 外部環境に露出している(耐力壁・柱・梁):30mm以上
- 腐食性が高い・海洋環境(直接土に接する壁・柱・床・梁・布基礎の立ち上り部分):40mm以上
- 布基礎の立ち上り部分を除く基礎部分:60mm以上
かぶり厚の基準は、部位によっても異なるので注意が必要です。
設計かぶり厚さ
設計かぶり厚さとは、施工過程でかぶり厚の誤差が発生することを防ぐために、建築基準法で定められている基準のかぶり厚さに対してプラス10mmの余裕を加えた基準になります。あえてかぶり厚に余裕を持たせることで、基準を順守できるようにするのです。
かぶり厚さは大きければよいものではない
かぶり厚は規定を超えて大きければ大きい方がよいのでは?と思われることもありますが、実際はそうではありません。鉄筋コンクリートは、鉄筋の圧縮・コンクリートの引っ張りの弱さといった弱点を補強するために複合されたものです。
適切な厚さでなければ、ひび割れも大きくなりやすく劣化が加速してしまう恐れがあるため、鉄筋コンクリートのよさを最大限に活かし、構造物の寿命を伸ばすには、規定ギリギリで鉄筋に配置するのが、最も効果的だといえます。
かぶり厚さの測定方法
かぶり厚さの主な測定方法を解説していきます。
電磁波レーダー法
電磁波レーダーを利用して、鉄筋の平面的な配置とかぶり厚を測定する方法です。電磁波レーダーを放射して、反射して戻ってくる伝達時間を元に測定します。取扱いが簡単で、短時間で広範囲の探査が行える他、すぐに結果が得られるのが特徴です。
電磁誘導法
測定したい場所に電磁波を発生させて、コイル電圧の変化を計測することによって、かぶり厚を測定する方法です。測定者によるデータのばらつきが起こりにくいため、高精度でかぶり厚を測定できるのが特徴です。
まとめ
かぶり厚測定は、鉄筋コンクリートの長所を最大限に活かすために必要な工程です。かぶり厚は大きすぎてもよくないため、設計かぶり厚さが最大限であることを忘れないようにしましょう。
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