石川県を中心として、富山県・福井県を商圏に「非破壊検査」「構造物点検」を行っている株式会社セイレイメンテックです。
今回は、非破壊検査のひとつ『超音波探傷試験』に焦点を当ててお話をしていきます。
超音波探傷試験とはどのような試験方法?
超音波探傷試験とは、『Ultrasonic Testing』とも呼ばれる非破壊検査における手法のひとつです。
パルス発信機、探触子、受信機、表示部で構成される機器を使用して検査を行います。
超音波を試験体内部に伝播させて、きずから反射した超音波の強さと反射する範囲を元に、きずの大きさや形状を推定することによって、試験体の評価を行うものです。
超音波とは
人間が聞くことのできる周波数は、一般的に20Hzから20000Hzとされています。
この範囲を超える高い振動数の弾性波(音の波のこと)を超音波と呼びます。
身近な例ですと、コウモリが暗闇の中で障害物を探知したり、イルカが海中の障害物や魚を探知に利用しているイメージではないでしょうか。
上記の例をもとに潜水艦のソナーや、医療診断、そして非破壊検査へと応用されるようになりました。
超音波の性質
超音波は電波と違う性質を持っており、空気中よりも水や金属など物質の中で強い伝播力を発揮するという特徴があります。
※真空状態の中では全く伝わりません。
超音波応用機器
超音波の特徴を活かし、応用されている機器がたくさんあります。
一番身近な例ですと、よくメガネ屋さんの店頭に設置されている『超音波洗浄機』などが挙げられます。
キャビテーション効果と呼ばれる20kHz以上の超音波を流すことで、液体で満たした洗浄槽の中に気泡が発生。気泡が破裂した際の衝撃波により、表面の汚れを浮き上がらせる仕組みで汚れを落とします。
その他に病院で利用されているエコー検査や、風の速さを測定する風速計なども通信的応用機器として分類され、超音波は我々の生活に幅広く関わっています。
超音波探傷試験の種類
超音波探傷試験にも超音波を入射させる角度や対象となるものによって対応法が異なります。
垂直探傷
超音波を、真上から垂直に入射させる方法です。
きずがなければ対象物の底からのエコーしか現れず、きずがある場合、底の前にきずから反射したエコーが現れます。
主に鋼板などの検査に使用する場合が多いです。
斜角探傷
垂直探傷のように、真上から超音波を入射することができない場合は、文字通り斜めに超音波を入射させます。
斜角探傷では、きずなどの反射源がなければ超音波は反射することがありません。
主に溶接部などの検査に使用する場合が多いです。
フェーズドアレイ法
フェーズドアレイ法とは近年、医療分野から工業分野に広がってきた方法です。
広範囲に入射させた超音波ビームを電子的に制御することで検査対象物の内部状況を断面的に把握できることが特徴です。
その中でもいくつか種類があるので、ご紹介します。
リニアスキャン
振動子といって超音波の発生部分が多数ついている機器を使用して、垂直に超音波を入射させ行います。フェーズドアレイ手法と分類されることもあります。
多数の素子を並べた探触子とし、1回に複数の振動子(例えば10個)を駆動しながら、ビームを順次移動させます。
主に大型の設備や、配管溶接部の高速探傷として行われることが多いです。
セクタースキャン
こちらもリニアスキャンと同じく振動子が多数ついている機器を使用して、斜めに超音波を入射させます。同じく、フェーズドアレイ手法と分類されることがあります。
機械的に入射角度を変化させ角度ごとの反射超音波を機械で合成して断面の画像を作成します。
こちらもリニアスキャン同様、大型の設備や溶接部に関するきずの検査に行うことが多いです。
TOFD法
TOFD法とは飛行時間回析法(Time Of Flight Diffraction)と呼ばれる方法です。
送信探触子と受信探触子を向かいあわせに配置し、送信探触子から縦波を伝播させ内部のきずの上端および下端で発生した回折波を受信探触子で受信します。
反射波ではなく、超音波がきずに当たったときにきず端部で発生する回折波を利用してきずを見つけるので、きずの傾きによる影響をあまり受けずにきずの深さと高さを精度良く測定することが可能な技術として知られています。
縦波と横波について
超音波の音の波には、さまざまな種類がありますが超音波探傷試験においては、主に『縦波』と『横波』が使用されます。
縦波
縦波とは、粒子の振動が波の進行方向を同じ方向に発生する波を指します。
伝達が最も早い波で、先ほどお話した垂直探傷では主に縦波が使用されます。
横波
横波は、粒子の振動が波の進行方向と直角の横に発生する波を指します。
縦波に比べると伝達速度は半分ほどになります。
斜角探傷では、主にこちらの横波が使用されます。
一般的な材料の音速
材料 | 音速 | |
縦波 | 横波 | |
鋼 | 5920m/秒 | 3240m/秒 |
ステンレス | 5660m/秒 | 3120m/秒 |
アルミニウム | 6380m/秒 | 3130m/秒 |
鋳鉄 | 4550m/秒 | 2770m/秒 |
銅 | 4650m/秒 | 2260m/秒 |
ガラス | 5770m/秒 | 3430m/秒 |
ポリ塩化ビニル | 2390m/秒 | 1060m/秒 |
ナイロン | 2690m/秒 | 1090m/秒 |
(出典/ダコダ・ジャパン(株) https://www.dakotajapan.com/)
まとめ
今回は、超音波探傷試験についてお話をしました。
超音波探傷試験は高価な消耗品をあまり必要とせず、試験速度が早いことが特徴です。また探傷距離も長いという利点もあります。
弊社では、主に土木構造物、プラント設備、製品検査において非破壊検査を実施しております。検査において気になることやご質問に関しましては些細なことでも、お気軽にお問い合わせください。